藤原歌劇団公演 《蝶々夫人》 オンデマンド配信
2024年2月17日(土)10:00AM

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 藤原歌劇団公演 オンデマンド配信
 G.プッチーニ《蝶々夫人》

 指揮:星出 豊
 演出:粟國安彦
 再演演出・振付:立花寶山

 蝶々夫人:伊藤 晴
 ピンカートン:澤崎一了
 シャープレス:折江忠道
 スズキ:但馬由香
 ゴロー:松浦 健
 ボンゾ:豊嶋祐壹
 ヤマドリ:泉 良平
 ケイト:北薗彩佳
 神官:坂本伸司

 合唱:藤原歌劇団合唱部
 管弦楽:パシフィックフィルハーモニア東京

 2023年8月27日(日)ベイシア文化ホール(群馬県民会館)大ホールで上演された公演のオンデマンド配信です。

 いつもながら粟國安彦さんのジャポネスクな舞台が限りなく美しい。
 このセットで引っ越し公演が出来るというのだから驚いてしまいます。
 再演演出の立花寶山さんによると思われる照明が実に巧みでした。

 二期会の栗山昌良演出も良かったけれど、今は宮本亜門さんのおかしな演出に変わってしまったのは残念です。

 伊藤 晴さんは昨年の名古屋テアトロ管弦楽団《ラ・ボエーム》で声にビリ付きを感じて心配していたのですが、今回はしっかりした歌唱で感心しました。
 何より一瞬一瞬で変化する細やかな表情付けが蝶々さんになりきって素晴らしかったですね。

 澤崎一了さんのピンカートンは普通。
 折江忠道さんのシャープレスは直立不動の演技が多かったでしょうか。

 いつも書いているのですが、「ある晴れた日に」はピンカートンが帰ってこないのでは無いかと心配するスズキを納得させるために歌われる曲です。
 だから、スズキに向かって歌われなければなりません。

 僕の理想のスズキはロイヤルオペラハウスのDVD(蝶々さん:エルモネラ・ヤオ)に見るエリザベス・デショング
 彼女はグラインドボーン音楽祭のDVD(蝶々さん: ORUGA BUSUIOC)でもスズキを歌っており、スズキのスペシャリストといえるでしょう。

 デショングはMETライブビューイング(蝶々さん:ホイ・ヘー)にも出ていて、幕間のインタビューで次のように語っています。

 スズキは黙っているときが最も雄弁だと思う。
 あの表情、あの眼差し、さり気なく逸らす視線。
 その時こそ語っている。

 蝶々さんがスズキに対して歌えばスズキは歌が無くても適切なリアクションが出来、相乗効果でアリアに対する感動も高まるわけです。
 スズキにお尻を向けてはスズキも反応のしようが無いでしょう。
 藤原歌劇団でも2014年に見た演出補:松本重孝さんによる公演ではもっと蝶々さんに絡んでいたのに。

 蝶々さんが自決を決心する場面では殴られても蹴られても蝶々さんにすがりついて欲しい(デショングのように)。
 そして最後に蝶々さんに会わせるために息子を連れてきて欲しい(デショングのように)。

 星出 豊さん指揮するオーケストラはちょっと大人しかったでしょうか。
 蝶々さんが自決を決心する場面のティンパニーはもっと炸裂して欲しかったですね。
 
 《蝶々夫人》ファンにはミュージカル《ミスサイゴン》を是非お勧めしたい。
 Youtubeで「ミスサイゴン マニラ」と検索すれば、レア・サロンガ演じるキムを見ることが出来ます。