二期会名作オペラ祭 《蝶々夫人》
2014年4月23日(水)6:30PM 東京文化会館 大ホール

「REVIEW14」に戻る  ホームページへ  《蝶々夫人》観劇記録
 
 
 昔は《蝶々夫人》を見ると、現実を理解できない彼女の愚かさにイライラしたものです。
 しかしその後、いろいろな舞台を経験するうちに、今ではこのオペラが大好きになってしまいました。
 中でも影響を受けたのは、タッデイのシャープレス(2003年3月30日)、栗山昌良演出の堺シティオペラ(2005年9月4日)、そしてメットライブビューイング(2009年3月29日)です。

 栗山昌良演出の堺シティオペラはまったくジャポニズムの極みと言ってもよい美しい舞台で、同じ栗山昌良演出の東京二期会の舞台は、一度見てみたいと思っていました。
 プログラムの栗山さんと妹尾河童さんの対談を読んでいたら、栗山さんが「(米寿を迎え)この『蝶々夫人』をいい機会に身を引くつもりだ」と語っておられます。
 どうも最後に間に合ったようです。

 二期会名作オペラ祭《蝶々夫人》
 2014年4月23日(水)6:30PM
 東京文化会館 大ホール

 指揮:ダニエーレ・ルスティオーニ
 演出:栗山昌良

 蝶々夫人:腰越満美
 スズキ:永井和子
 ケート:佐々木弐奈
 ピンカートン:水船桂太郎
 シャープレス:福島明也
 ゴロー:牧川修一
 ヤマドリ:畠山茂
 ボンゾ:峰 茂樹
 神官:馬場眞二

 管弦楽:東京都交響楽団
 合 唱:二期会合唱団

 最近の栗山演出は悲母観音が出てくる西宮の《蝶々夫人》(2006年7月16日17日)や、登場人物がほとんど動かない関西二期会の《フィデリオ》(09年11月22日)などおかしな舞台がありましたので心配でした。
 しかし、この《蝶々夫人》では、期待どおりの美しい舞台を見せていただきました。

 今年31歳になるという指揮者、ダニエーレ・ルスティオーニの創り出す音楽は、思わぬメロディが浮かび上がったり、新鮮な驚きがあるもので、気に入りました。
 オーケストラとずれる部分もあったようですが、慣れもあるのでしょう。
 今日が初日ですからね。

 腰越満美さんの蝶々さんとピンカートンの水船桂太郎さんは美男美女なので、第一幕最後の二重唱などヴィジュアル的に美しかったですね。
 腰越さんは歌も演技も素晴らしかった。
 水船さんはリリックテノールなのでしょうか、声量に不満を感じるところはありました。

 『ある晴れた日に』の字幕が「ある日」になっていました。
 愛知トリエンナーレ《蝶々夫人》の講演会で、講師の小畑恒夫先生に「ある晴れた日」(un bel di)の「bel di」は「晴れた日」ではなく、「佳き日」だと教えていただきました (@o@)。
 雨の日でもピンカートンが帰ってくる日は「佳き日」ですから、これからの上演はこの字幕になっていくのでしょうか?
 アリアの名前も『ある佳き日に』になるのかな?
 
 二期会名作オペラ祭《蝶々夫人》を見たら、藤原歌劇団創立80周年記念の《蝶々夫人》(粟國安彦演出・6月27~29日)も見なくては。
 笛田博昭さんがピンカートンですからね。