ボローニャ歌劇場来日公演 《清教徒》
2011年9月11日(日)3:00PM びわ湖ホール大ホール

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 昨日の堺シティオペラに続いてこの日も蒸し暑く、少しでも外に出る時間を減らそうと、チェックアウトの11時までホテルでテレビを見ていました。
 今日は9.11から10年、3.11から半年という慰霊の日でした。

 ホテルを追い出されてからも、新大阪と京都のコーヒー店で新聞を読みながら時間調整をして、それでも時間が余ってしまったので、涼しいJR車両で草津まで行って、大津まで戻ってきました (^_^ゞ。

 大津駅のタクシー乗り場には列が出来ていましたが、タクシーは折り返し運転で次々とやって来ます。
 しばらくすると、次の列車でやって来た集団が後ろに並びました。
 その時です「タクシーは相乗りにして下さい!」と叫ぶ声が聞こえました。
 振り返ると、クリーム色の和服を着た中年女性が「間に合わないじゃありませんか!」と絶叫しているんです。

 しかし、タクシーは次々来るし、時間も30分はあります。
 もし相乗りしたらタクシー運転手さん達の総収入は2分の1,3分の1に激減していまうではありませんか。
 「地域経済活性化のために」と思って一人で乗ったら、「相乗りして下さいと言ってるじゃありませんか!」とまた叫ばれました (^_^ゞ。
 タクシーの運転手さんも「こんなの初めてです」と驚いていました。
 その和服の女性は、僕の5分くらい後に到着しまして、ロビーでゆっくり歓談していました。
 余りにも珍しい出来事だったので報告しておきます。

 入口ではパンフレットが無料で配られていました。

 今回ボローニャ歌劇場は《カルメン》《清教徒》《エルナーニ》と3つの演目を持ってきました。

 ところが、《カルメン》のカウフマンは胸部腫瘍の手術、《清教徒》のフローレスは海水を飲み込んで喉を壊した、《エルナーニ》のリチートラに至ってはオートバイ事故で脳死状態になり臓器移植をして死亡してしまいました。

 主役3人が交代してしまった欠陥パンフレットですから、こんなものを売るわけにはいかなかったのでしょう。
 プログラムで微笑んでいるリチートラが痛ましいばかりです。
 それに較べれば、フローレスの「海水を飲み込んで喉を壊した」などという理由はお笑いかと思われました。

※後日じっくり読んでみると、このプログラムは内容の濃い、優れものでした。

 チケット代が高い来日公演は、そんなに行くことが出来ません。
 ①上演の機会の少ない演目、②スーパースターのフローレスが歌う、③美しいびわ湖ホール、という3つの理由で、僕は《清教徒》を選んだのでした。
 同じような理由で《清教徒》を選んだ方が多かったのでしょう、昨日の《カルメン》は客席がもっと寂しかったそうです。

 僕の場合はもう一つ、④ボローニャ歌劇場は07年5月に現地で聞いたことがあるので、懐かしいんですよ (^_^) 。
 ボローニャ・テアトロコムナーレはびわ湖ホールよりずっと小さい劇場でした。

 そういえば、1998年9月のびわ湖ホールのこけら落としはボローニャ歌劇場の来日公演でしたね。


  ボローニャ歌劇場来日公演 ヴィンチェンツォ・ベッリーニ 《清教徒》
  2011年9月11日(日)3:00PM びわ湖ホール大ホール

  指揮:ミケーレ・マリオッティ
  演出:ジョヴァンナ・マレスタ(オリジナル演出はピエラッリ)

  エルヴィーラ(ヴァルトンの娘):デジレ・ランカトーレ
  アルトゥーロ(騎士 王党派):セルソ・アルベロ
  リッカルド(大佐 清教徒):ルカ・サルシ
  ジョルジョ(ヴァルトンの弟):ニコラ・ウリヴィエーリ
  ヴァルトン(総司令官 清教徒):森 雅史
  エンリケッタ(亡きチャールズ1世の王妃):ジュゼッピーナ・ブリデッリ

 予習はあらすじを読んだだけ。
 まず驚いたのがベッリーニの音楽の美しさ。
 最初から最後まで魅力的なメロディーが続き、本年5月のパリのお墓巡りで、彼のお墓をパスしたことが悔やまれます。
 ベッリーニの美しさを教えてくれた指揮者のマリオッティにも感謝しています。

※ベッリーニ(1801年~1835年)のお墓はパリのペール・ラシェーズ墓地から、1876年に故郷カターニャ(シチリア島)の大聖堂に移されているそうです。

 ストーリーは相当いい加減で、エルヴィーラは簡単に狂乱してしまう。
 最後も、王党派が敗北したのになぜアルトゥーロが許されるのか理解できなかったけれど、ハッピーエンドなら良いじゃないかと、勢いに吹き飛ばされた感じ (^_^ゞ。
 でも、アルトゥーロがエルヴィーラを発狂させてまで連れて逃げたチャールズ1世の王妃は、一体どうなってしまったのだろうか?

 ランカトーレの声は低い部分が響きを失って、マンガ声みたい。
 高い方は出ているので、二重人格に聞こえました。
 不調だったのだろうと思います。

 フローレスの代役のセルソ・アルベロは、声量は少し物足りなかったけれど芯の通った清潔感のあるテノールで、フローレスが歌わないとプログラムで言っていた「ハイF」も歌ってくれました(らしいです (^_^; )。
 現地の公演ではフローレスとダブルキャストだったそうですが、納得の出来るテノールでした。

 「ハイF」は少し歪んだ感じはあったけれど、独特の音で、耳に焼き付いています。
 この「ハイF」を聴く機会がまたあるのでしょうか?
 貴重な経験でした。

 ロビーで教えて貰ったのですが、僕はこの人を2007年4月に、スロヴェニア国立マリボール歌劇場 《ラクメ》でランカトーレと一緒に聴いているそうです (^_^ゞ。
 《ラクメ》で覚えているのは、ランカトーレのヘソ出しルックだけです (^_^; 。

 その他のキャストも、響きのある声の方ばかりで、全体的に「オペラを見た」と満足できる出来でした。

 演出はコーラスが整列して歌うなど、大したことはなかったけれど、それでもドイツ語圏のおかしな「読み替え」よりはずっとましですね。

 ネットで見つけた『総統閣下はボローニャ歌劇場に相当お怒りの様子です』がすごく面白い。
 「総統閣下シリーズ」なるものがあるらしいが、中でもこれは秀逸でしょう。
 自分がいつでも見られるように残しておきます。
 http://www.youtube.com/watch?v=SdDsFRTKlgM&feature=share
 

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