飯守泰次郎 & 東京シティフィル 《パルジファル》
2005年11月13日(日)2:00PM

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 僕は一回だけバイロイト歌劇場で観劇したことがありまして、それは1980年8月16日。
 演目は《パルジファル》で、一度もワーグナーのオペラを見たこともない初心者に、ワーグナー最後のオペラとは荷が重い演目でした。

 演出:ヴォルフガング・ワーグナー  指揮:ホルスト・シュタイン
 アムフォルタス:ベルント・ヴァイクル ティトゥレル:マッティ・サルミネン
 グルネマンツ:テオ・アダム  パルジファル:マンフレード・ユング
 クリングゾル:ファランツ・マツーラ  クンドリー:ドゥーニャ・ヴェイソヴィッチ

 暗闇の中から聞こえてきた前奏曲にもゾクゾクしましたが、第一幕の舞台転換の音楽、グルネマンツとパルジファルが舞台奥(すごく遠い)に消え去ると、周囲から大道具が集まってきて聖杯城を型作り、聖杯の騎士達が歌いながら入城してきた場面には、「これこそワーグナーオペラの最も深奥な神殿だ」と痺れあがったものです。
 


 《パルジファル》はその後、ウィーン歌劇場来日公演、クレーマー&ボン歌劇場アルブレヒト&読響 と見ましたが、後ろの2つは思い出すのも忌まわしい公演でした。

 飯守泰次郎先生は世界最高のワーグナー指揮者(の一人?)と確信しておりますが、僕のベストスリーは、1998年の名古屋フィル《ワルキューレ》2000年の関西二期会《パルジファル》、そして2003年東京シティフィル《神々の黄昏》

 関西二期会の《パルジファル》は、今回のプログラムによれば、「伝説的名演」なんだそうで(僕もそう思っていますが)、「あの感激を再び」ということで日生劇場に出かけました。

 日生劇場は帝国ホテルの隣にありまして、まず帝国ホテルに入ってみました。
 帝国ホテルは15日の紀宮さまの結婚式を間近に控え、ちょっと緊張した雰囲気が感じられました。

手前「日生劇場」と「帝国ホテル」 「帝国ホテル」
ロビー 入館制限の掲示
日生劇場  


 2005年11月13日(日)2:00PM
   舞台神聖祝祭劇 《パルジファル》

   指揮:飯守泰次郎  演出:鈴木敬介

    パルジファル:竹田昌弘
    グルネマンツ:木川田 澄(きよし)
      クンドリ:小山由美
   アムフォルタス:福島明也
    ティトゥレル:高橋啓三
    クリングゾル:島村武男

 東京オペラシンガーズ 洗足学園音楽大学合唱団

 オーケストラル・オペラと言いながら、舞台上はセットが組まれ、オーケストラはピットに降りています。
 歌手達は普通のオペラ通りに歌い演技し、それなら何処がオペラと違うのか?

 それは合唱団が譜面付きだったことです。
 聖杯の騎士が入場後、譜面台の高さを調節しているのはいかにも不味かった。

 びわ湖ホールでおなじみの東京オペラシンガーズの声量にはいつもながら圧倒されたけれど、各キャストがあれだけ長い楽譜を暗譜しているのだから、そして関西二期会の合唱は暗譜で歌ったのだから、もう少し頑張っていただきたかった。
 鈴木さんは5月の関西二期会《タンホイザー》で、合唱団にきめ細かな演技を付けていましたからね。

 タイトルロールの竹田昌弘さんは、週刊誌でも話題になったように京都大学出身、ゼネコンの一級建築士で、愛知万博のマンモス展示館も設計したとのこと。
 「声楽家の妻の勧めでレッスンを始めたのが32歳。29歳で結婚するまでオペラを観たこともなかった」とのことで、プログラムによれば木川田さんのお弟子さんらしい。

 もう少し声量を望みたいところもありましたが、このような長丁場のオペラ、常に全力投球ではスタミナ切れも心配になってきます。

 関西二期会公演で「日本にこのようなワーグナー歌手がいたのか!」と驚嘆した木川田さんのグルネマンツは、5年経って少し歳を取ったでしょうか。
 その分、老騎士グルネマンツらしくなった、とも言えるのかな (^_^ゞ?

 東京のキャストはどの役も、端役に至るまでレベルが高くて、満足満足。
 中でもクンドリ役の小山由美さん。
 僕はクンドリの歌っているところは訳が分からず、いつも寝てしまうんですが (^_^ゞ、小山さんの声は低い音から高い音までむら無く響き渡るもので、その演技とも相まって圧倒的な印象を受けました。

 《パルジファル》は拍手が難しいことで有名なオペラです。
 「オペラファンたちのメッセージボード」で質問したところ、次のようなアドバイスを受けました。

 ウィーンのプログラムには、依然として注意書きがありますよ。
 戦前のポスターなんかにある、注意を喚起するための(通常と異なる開演時間などのときに使う)指さした手のカタチをつけて、1882年にワーグナー自身が発言した拍手に対する希望で、「1幕後に関しては、はっきり禁止とは言っていないけれど、拍手無用。2・3幕後は、歌手に対する感謝を、どうぞご自由に!」というニュアンスです。

 僕がバイロイトで見たときには、第一幕のあとでは拍手無し。
 拍手を始める人がいると、「シー!」と拍手を制する声が飛ぶ。
 この「シー!」を言うのが楽しみで、《パルジファル》に来ているベテラン観客もいるとか (^_^;。
 第二幕ではクリングゾル(第二幕だけで帰ってしまう)だけが、カーテンコールに出てきました。

 今回の公演では「ご来場のお客さまへ」というメモが配られ、「コンサートの雰囲気や余韻の妨げとなるような拍手やブラボーなどもご遠慮くださいますよう、お願い申し上げます」と微妙な文言が書かれていて、どうなるのか興味津々でしたが、第一幕、第二幕とも拍手は出たものの、カーテンコールはありませんでした。

 終演後のカーテンコールは各歌手に「ブラヴォー!」が飛び、すごい盛り上がりです。
 感動的だったのは最後に出てきた竹田さんが「ブラヴォー!」を受け、感極まって泣いていたこと。

 考えてみれば、彼以外はすべて東京芸大出身のベテランばかりで、関西二期会からやって来た京都大学出身の自分が東京の観客にどのように受け止められるか、彼の心の中は不安でいっぱいだったのでしょう。
 実際に東京二期会《さまよえるオランダ人》では、オランダ人にブーイングが飛んだわけですから。
 努力が報われて良かったですね、竹田さん (^_^) 。

 そして、最後に登場したマエストロ飯守。
 この巨大なワーグナーの世界が、一人の人間が放出するパワーから構築されているのだということに思いを致し、その偉大さに対する敬愛の念は、ますます高まります。
 今年は関西フィルの《ナクソス島のアリアドネ》と、この《パルジファル》と、2つの素晴らしいオペラを見させていただきました。
 今後も多くのオペラを指揮していただくよう、心から願っております。


◇ 東京宝塚劇場 「初風緑」退団パレード

 終演後、有楽町駅を目指して歩いていたら、道の両脇をびっしりと埋め尽くした異様な集団が並んでいました。
 ここが東京宝塚劇場で、この日は宝塚歌劇団専科の男役スター初風緑さんの引退公演、宙組「炎にくちづけを」「ネオ・ヴォヤージュ」の千秋楽。
 18年間在籍した宝塚を退団する初風さんが、終演後劇場前をパレードするんだそうです。

 って、後日「宝塚友の会」に電話して教えてもらったんですがね (^_^ゞ。

道の両脇をびっしりと 東京宝塚劇場


◇ 名古屋駅のイルミネーション 2005年

 本日デビューのデジカメ、Ricoh R3 で撮ってみました。



  
 
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