藤原歌劇団公演 ロッシーニ作曲《タンクレーディ》 2010年6月13日(日)3:00PM 東京文化会館 |
僕が初めて中井亮一さんに注目したのは、1998年3月14日に見た名古屋芸術大学オペラ公演《蝶々夫人》。 もう10年以上前のことですか。 中井さんは2年生でしたが、その学生とは思えない芝居達者な演技に驚きました。 「将来有望な若手が出てきたな」と思いましたが、藤原歌劇団のソリストになるとまでは予測できませんでした。 地元名古屋なので彼の舞台は多く見ていますが、2000年3月16日の名古屋芸術大学オペラ公演《カルメン》は、中井亮一さんが第一幕、第二幕のドン・ホセを歌い、笛田博昭さんが第四幕のドン・ホセを歌い、藤原歌劇団ソリストの揃い踏みというレベルの高い公演でした。 他には、2004年11月28日の四日市市民オペラ《ラ・ボエーム》、2009年12月19日の特定非営利活動法人名古屋尾張地域市民オペラ振興会公演《魔笛》など。 同じ名古屋芸術大学、中島基晴門下の笛田博昭さんは07年《ラ・ボエーム》、09年《ラ・ジョコンダ》ですでに藤原デビューを果たしていますので、本日は中井亮一さんの藤原デビューを楽しみに遠征してきました。 11年3月《ルチア》に出演する小山陽二郎さんも愛知県立芸術大学出身なので、藤原歌劇団のテノールは名古屋勢が大活躍ですね。 ![]() 藤原歌劇団公演 ロッシーニ作曲《タンクレーディ》 2010年6月13日(日)3:00PM 東京文化会館 指 揮:アルベルト・ゼッタ 演 出:松本 重孝 管弦楽:読売日本交響楽団 合 唱:藤原歌劇団合唱部 タンクレーディ:マリアンナ・ピッツォラート アメナイーデ:高橋 薫子 アルジーリオ:中井 亮一 オルバッツァーノ:彭 康亮 イザウラ:島木 弥生 ロッジェーロ:松浦 麗 《タンクレディ》はロッシーニが20歳で作曲し、ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場で初演されたオペラ・セリア(真面目なオペラ)。 ビザンツ帝国とサラセン帝国の時代、1000年ころのシチリア島シラクサ。 実力者の一人アルジーリオはオルバッツァーノとの和解のため、娘のアメナイーデを彼と結婚させようとする。 しかし彼女には恋人タンクレーディがいた。 なんだか、《ランメルムーアのルチア》みたいなお話ですね。 アメナイーデが宛名のない恋文をタンクレーディに送ったために祖国を裏切った罪で死刑を宣告されてしまうというありえないストーリー展開ですが、これに音楽と舞台が付くとけっこう感動してしまうところがオペラの魔法でしょうか。 彼女のために戦う騎士として現れたのが恋人タンクレディ。 彼はオルバッツァーノを打ち負かす。 ということで、《ローエングリン》も混じってきました。 タンクレーディ役のマリアンナ・ピッツォラートは、ペーザロのロッシーニ・オペラ・フェスティヴァルでも同役を歌った若手メゾソプラノ。 深い歌声の良い歌手かと思いました。 少し体型が太めだったでしょうか。 アメナイーデ役の高橋薫子さんを見るのは初めてでしたが、舞台姿も美しく、叙情的な曲もアジリタの難しそうな曲も見事に歌い上げ、ファンになってしまいました。 高橋さんの父親アルジーリオ役の中井さんは実際には高橋さんより年下のはずですが、予想以上の好演で嬉しく思いました。 アルベルト・ゼッダの指揮するロッシーニのオペラ公演は2006年の《ランスへの旅》、2008年の《どろぼうかささぎ》、2010年の《ギヨーム・テル》と聴いていますが、その一回一回が宝物です。 松本重孝さんの演出は大きな柱が数本立った抽象的な舞台装置で、このような無駄な費用をかけないリーゾナブルな演出は好きですよ (^_^) 。 2003年6月1日(日)に見たトリエステ・オペラの舞台(タンクレディ:ダニエラ・バルチェッローナ)よりも出来の良い公演かと思いました。 |